コンクリートが危ない

コンクリートは、材料を施工をきちんとすれば100年以上の長期間にわたって、建物の役割を果たす。しかしながら、高度成長期に、施工数が急激に増えたため、品質管理に破綻をきたし、30年程度しか持たないようなコンクリートが続出した。たとえば、山陽新幹線がその例である。その問題指摘と、今後どのように対策すべきかの話である。
コンクリートは、従来中性化による劣化が避けられないといわれてきた。しかし、高度成長期の劣化はそれを上回る。その原因をまとめた本である。マンションを買おうかなという人は、一度読んでみたらよい本だと思う。
さて、この本では、基本的な話から始まっている。
たとえば、コンクリートの規定量以上の加水がいけないとかを、素人向けに簡単に説明している。コンクリートの大敵は、アルカリ性を低下させる(中性化)ことである。これによって、鉄筋がさびやすくなってしまう。大気中で、アルカリ性を低下させるのは二酸化炭素であり、大きな穴が開いているとあっという間に入ってしまう。この大きな穴を開けてしまうのが不法加水ということであった。このため、水の量は適切に抑える必要がある。
ほかに、アルカリ骨材反応といって、強アルカリ性だと溶けてしまうしまう骨材がある。アルカリ性物質がナゼ混入したかというと、このころセメントの製法がキルンを用いた方法にかわった。この製法は、省エネルギー、大気汚染防止、量産という大変効率の良い方法であったが、アルカリ性物質を凝縮しやすいという欠点があった。また、コンクリート自体、塩分が多いと、アルカリ性を凝縮しやすいという問題も重なって、よりアルカリ骨材反応が起こってしまった。これは、海に近い瀬戸内海や日本海地域でかなり問題となった。しかも、この問題がたちが悪いのは、中性化よりも速い速度でコンクリートを劣化させてしまうことであった。
また、一方では、施工段階の手抜き工事が著しいことも説明している。
このように、細心の施工がコンクリートには必要なことが良くわかった。コンクリートは、一度固めてしまうと、中を見ることが難しい。このため、施工の良し悪しは評価されなかったためである。
また本の付録の章ががちょっと面白い。コンクリート工学者から見たいいマンションの選び方が一章になっている。マンションを買う人は一読されると良いと思う。たとえば、100戸以上のマンションで高層マンションなら、コンクリートの質が良いそうである。逆に1970年代のマンションは、コンクリートの質が悪い時代なので品質に注意ということであった。
また、この著者は、この分野の第一人者であり、コンクリートで心配になったら、この人の著書を詠むことを強く勧める。

コンクリートが危ない (岩波新書)

コンクリートが危ない (岩波新書)